公認会計士としての Noの言い方~監査クライアントの相談に対して否定的な意見を言う際には

会計士として、監査業務に従事していると、クライアントから会計処理等について相談を持ち掛けられるときがあり、時にはお客さんの意に沿わない回答をすることもあります。また、監査をしていて発見した事項について修正をお願いすることもあるでしょう。そんなとき、どういうふうに回答すればいいか、考えてみました。

相手の見解や背景を把握する

一番最初にすべきは、相手がどうしてそういう処理をしたか、しようとしているのか、見解や背景をさぐることは大切です。ぱっと聞いたときは、「これはだめだー。」と思っても、見解を聞くと、実は認める余地があるかもしれません。また、背景を聞けば、どうしてそういう処理をとりたいかわかります。そうすれば、直接的にはその会計処理を否定したとしても、別の方法を提案できるかもしれません。そうすれば、クライアントも満足することでしょう。

とはいえ、把握するのは大切ですが、決しておもねってはいけません。どんなに、相手の見解を考えようと、背景については理解できても、駄目なものは駄目なのです。では、駄目な時にどういうか、いよいよ本論にせまります。

すぐに否定しない

聞いて、瞬間的に否定するのはやめましょう。「~どうでしょうか。」、「それはだめですね。」という感じだと非常に印象が悪いです。クライアントからしてみれば、「あの人は相談しても、なにも検討せずにだめだなんて、冷たいな~。」と、いう感想を持ちがちです。

それを防ぐために、いったん、タイミングを置きましょう。よっぽど急いでれば別ですが、そうでない場合は「少し検討させてください。」、とか、もう少し手の内を見せるのであれば、「駄目かもしれませんが、検討してみます。」という風にワンテンポおくと、クライアントに対して、考えてくれている感を与えることがあります。とはいえ、あまりひっぱると、クライアントは回答が遅いことに不満を持つので、うまくバランスをとれるようにしましょう。

理論では負けない

上場会社の経理に属してたり、もともと、会計士出だったりすると、会計基準には明るく、会計処理について会計基準をふまえている場合があります。だいたいは、そのとおりで問題はないのですが、時には解釈におかしかったり、会計基準の適用に無理があったり、先方の言い分にしっくりこない、ということはあります。

そういう時、大切なことは理論で負けないこと。特に、なんとなくしっくりこない場合は、なぜしっくりこないのか、きちんと説明できるようにしておく必要があります。大概、この「しっくりこない。」ということは正しいのですが、それでは先方を説得できませんので。

理論的に負けてしまうと、そこで相手の言い分を認めざるを得なくなりますので、ここはじっくり考えて理論負けしないようにすることが必要です。

言い方は丁寧に

これは、すぐに否定しない、の続きで、時間をおいてからどうするか、ということです。相手の意に反することをいうので、言い方には気を付ける必要があります。あまり、偉そうに上から言うと先方の反感を買ってしまいます。

具体的には、(悪いことはしていないのですが、)「申し訳ありませんが、その会計処理を受け入れられません。」と、謝りながらも否定する。「色々と考えたのですが」とか、「上司とも相談したのですが。」とか、「品質管理部門とも折衝したのですが。」受け入れるためにした努力を伝える。もちろん、受け入れられない理由をきちんと基準等に基づきわかりやすく、時には何度も説明することは必要です。上司等自分より偉い人から説明してもらうのも、丁寧感がでますよね。

まとめ

会計士、立場上、「NO」と言わざるを得ないときは結構あります。その時に、きちんと対応しないと、コミュニケーションイシューとなり、クライアントとの関係は悪化してしまいます。会計士のコミュニケーションにおいて、「言い方は柔らかく、だが、言うことは厳しく。」が大切と先輩に言われたことがあります。言うべきことは言ったとしても、なるべく相手に理解していただくよう、言葉や誠意を尽くすことが必要です。

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