稼働時間を集計する際のジレンマとその解決方法を考えてみました

IT産業、コンサルティングファーム、会計事務所、その他サービス業等等、人に頼っている産業では、工数管理が重要なポイントとなってきます。この工数管理にあたっては、「稼働時間を正確に把握する。」ということが最も重要なことといっても過言ではありません。とはいえ、「稼働時間の正確な把握」って結構難しいのですよー。

稼働時間を正確に把握することの効用

最も重要な点として、稼働時間の正確な把握は従業員の健康管理上必要不可欠である、ということ。稼働時間が正確に把握されると、過剰に働いている人に対して適切な対策を講じることができます。また、残業代の支給というコンプライアンスの維持にあたっても、稼働時間を適切に把握することは大切です。

ビジネス的な観点からも、稼働時間の把握は必要です。その、プロジェクトやクライアントに対する採算を把握するには、どの程度の稼働がかかっているか正確に把握する必要があります。収益に比して工数がかかりすぎ、ということであれば、業務の効率化や場合によってはクライアントとの折衝という手を打つことができます。逆に適切に把握できないと、気付かないうちに不採算案件となってしまう、ということもあるでしょう。

あとは、メンバーへのサポートという観点からも有用です。思っている以上に時間がかかってしまう、というのは、業務の進め方や適性に問題があることもあり、そういう状況を適宜把握できれば業務の改善にもつながります。

稼働時間集計の難しさ

とはいえ、正確な稼働時間の把握、というのは結構難しかったりします。まず、プロジェクト/クライアントに対する予算が厳しい、という場合、リーダーは実際の費用の発生を抑えるよう意識します。そうなった場合、稼働時間をつけさせない、という気分になりがちです。

今の世の中、露骨にそういうことを言う人は少ないでしょうが、つけるのをためらわせるような言動やオーラを発する人というのは案外にいるものです。また、稼働はつけさせても、当該プロジェクトではなく間接作業としてつけるように誘導する、というのもやっぱり問題だったりします。

メンバー側にも要因があります。その業務が初めてであったり、自信がなかったりすると、つい、時間をつけるのを遠慮する、ということもしがちです。また、下手に時間をかけると「能力がない」と思われることを回避したい、というのも稼働時間をチャージすることを避ける要因になります。

稼働時間をきちんとつけてもらうためには

一つは、稼働時間をきちんとつけるような組織風土の醸成となります。つけない人、つけさせない人であっても、理屈としては稼働時間をきちんとつけるべき/つけさせるべき、と思っています。ただ、空気としてつけない/つけさせない、ようになっていることも多いような気がします。なので、組織風土を変えていく、ということが必要です。難しいようですが、組織風土はトップやリーダーの発言や態度でも影響を受けたりするので、上の人が「稼働時間をきちんとつけるように」というメッセージを言語的にも非言語的にも発し続けていくということが大切でしょう。表面上、対策を講じても、裏にもぐるだけなので、そうならないよう、根気よく粘り強く取り組む必要があります。

もうひとつはお客さんとの関係。お客さんが、過重との思える要求を低コストでがりがり押し込んでくること、は往々にしてあります。そこをきちんとコミュニケーションをとって、ある程度のところで食い止めないと、どんどんと要求は過大となりメンバーは疲弊しきってしまいます。通常、お客さんのほうが上位に立ってしまうのでなかなか難しいものがあるのですが、うまく仕切りたいところではあります。

まとめ

適切な工数管理、労務管理、コンプライアンスのためにはメンバーの稼働時間の管理が不可欠です。とはいえ、リーダー/メンバーそれぞれの要因により、それはなかなか難しかったりもします。ですが、組織風土の改善、お客さんとの関係の改善等を通じて、稼働時間の適正な把握を図っていきたいものです。

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