会計士と税理士のいう「保守的な処理」の違いとは

公認会計士も、税理士も、それぞれ、会計、税務の判断をする際に「保守的に判断しましょう」ということがあります。保守的、の具体的内容、実は両者で正反対だったりします。そのことについて検討してみました。

公認会計士が保守的、といった場合は、利益が小さくなるようにすることが該当します。つまり、収益はできる限り小さく、費用はできる限り大きくする、ということです。利益を小さくするようにして、その分、配当による社外流出を抑えて企業にお金を残すようにする、ということが元々の趣旨のようです。

逆に税理士が保守的に、といった場合は、収益(益金)を大きく、費用(損金)を小さくして課税所得を増やすことを意味します。特に、状況として明確に税務上の取扱いを確定できない場合に、保守的に課税所得を大きくなるように取り扱うことが多いです。そうすると、法人税等の金額が大きくなり、税務署からは突かれにくくなる、という点で保守的、と言います。

やっぱり、税務調査の際にあれこれ指摘されるのは税理士としてはあまり面白くないので、どうしても判断が保守的になりがちです。また、納税者も税務署にあれこれ言われるのはいやなので、「それなら無理しなくてもいいですよ。」という方向に流れがちです。で、ある程度、糊代のある判断になるようです。

とはいえ、会計も税務も保守的であれば、なんでもいい、というわけではありません。会計であれば、会計基準の範囲を逸脱して保守的な処理をすることは、「過度の保守主義」として厳に戒められています。また、税務であっても不当に所得を大きくし税額を大きくするのは、納税者の利益を損ね、場合によっては損害賠償請求をされる、こともあります。ので、保守的、というのは判断基準の一つであり、それが全てではない、ということです。

会計と税務で保守的、といった時に、その内容が正反対なところが面白い、ですよね。だからどうした、という話ではないのですが、会計小咄として受け取っていただければと思います。

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