中小企業でも知っておきたい内部統制(管理)の知識(6) ~統制環境:社風、組織風土、理念

中小企業でも知っておきたい内部統制(管理)の知識、いよいよ、内部統制の構成要素に入っていきます。構成要素、と書くとわかりにくいのですが、管理方法の分類、とらえていただければ、と思います。COSOの分類では統制環境、リスク評価、統制活動、情報と伝達、モニタリング活動の5種類があります。今日は、そのうちの一つ、統制環境から。

統制環境とは

財務報告における内部統制に関する基準では、以下の様に定義されております。

「統制環境とは、組織の気風を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング及びITへの対応に影響を及ぼす基盤をいう。」

経営者としての素質、誠実性のような経営者個人に属するもの、組織風土、社風、価値観という明文化されていないが会社の活動に影響を与えるもの、経営理念のように具体的なルールではなく方向性、心構えを説いているようなものがあります。普段は、特に守ることを意識してはいないのですが、従業員の行動に影響を及ぼすものです。

統制環境はなぜ必要か

統制環境、目に見えないものではあるものの、会社の管理を考えるにあたっては非常に重要なものとなります。従業員の行動は知らず知らずのうちに統制環境に影響されます。

悪い統制環境が会社をむしばんでいる場合には、ルールや手続で従業員の行動を絞っても、抜け道を探してしまったりもします。お金にだらしない組織であれば、みんなお金にだらしなくなります。時折、官庁や会社組織で多くの従業員が経費等を悪用していた、としてニュースになることもありますが、これは悪い統制環境(多少は経費を自分のために使ってもいいという価値観、みんなやっているという組織風土)が原因となっていたりすることもあります。

従業員の行動を全てルールや手続で縛るわけにはいきません。そのため、ベースとしての統制環境が必要となります。

どのように統制環境を構築するか

まずは、経営層の考え方/行動によります。特に中小企業の場合は社長の考え方/行動が非常に大きな影響を与えます。社長が倫理的であれば、従業員もそれに従うようになります。行動としても、社長が早く出社すれば従業員も早く出社する、お金や時間にルーズなら従業員もルーズになってしまう、ということがあるでしょう。ここで大切なことは考えと行動を一致させることです。不一致の場合は、簡単な方に流れてしまいます。いくら口できれいごとを並べても、行動が伴っていないと従業員は言うことを聞かなくなります。表面だけは聞いているが、実際には無視しているということも起こりえてしまいます。

もう一つは、常に繰り返すこと。経営理念、倫理ということは、どうしても頭から抜けがちで業務をこなすことに意識が集中しがちです。それを防ぐためには繰り返すことでしょう。例えば、会議の都度、言い方を変えて説明する、会社の中に掲示する(この場合、常に綺麗な状態であることを意識してください)、読ませる、ということがあります。こうやって繰り返していくと徐々に統制環境が醸成されてきます。

まとめ

統制活動、比較的見えづらいものですが、従業員の行動に大きく影響を与えます。なかなか、すぐに変えることは難しいのですが、徐々にいい方向に変化させたいものです。

 

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