イタリア街歩き記⑩~ベネチアを代表する翼の生えた獅子とは

前回は、アカデミア地区の観光について、少し書いてきました。今回は少し緩和休題して、ベネチアでよく見る、翼の生えた獅子の旗について書いてみます。

ベネチアの街を歩いていると翼の生えた獅子をよく見ます。例えば、この写真。右側がイタリアの国旗、左側がEUの旗です。そして、なんと真ん中にあるのが、翼の生えた獅子の旗。真ん中ですよ、真ん中。ローマでも同じように旗を掲げている建物はありますが、その場合は、イタリア国旗とEUの旗の二本だけ。

この翼の生えた獅子、そのいわれや由来はなにか、ということですが、これは、塩野七生さんの書いた「海の都の物語」に紹介されていますので、引用します。ベネチア共和国の守護聖人は聖マルコということを念頭におき、読んでみてください。

「しかも聖マルコを寓意するのが、獅子ときている。福音書作者の4人の聖人には、それぞれ寓意の動物が決められていた。ヨハネ黙示録に出てくる四つの動物である。聖マテオには(中略)、聖ルカには(中略)、聖マルコには復活を意味する獅子、聖ヨハネには(中略)。これらの動物はいずれも翼をつけている。翼をつけた獅子、聖マルコの獅子、これならば誰でも景気づけられる。ヴェネチア人は、福音書を書いた知識人の聖人には、彼にささげた寺院で安息してもらって、聖書に片足をかけた翼のある獅子の像を、国旗にしたのである。(海の都の物語 上、中公文庫 32p)」

つまり、この翼の生えた獅子がかつてのベネチア共和国の国旗で今でもベネチアに住む人は、この旗に強いこだわりをもっていて、その旗をかざっているわけです。旗はこんな感じでベネチアの街の中でかざられていますが、旗以外でも、ところどころ顔を出しますので、順次、そんな獅子の写真を紹介します。

まずは、サンマルコ寺院。サンマルコを遇するのが翼の生えた獅子であるため、サンマルコ寺院にも獅子の像があります。具体的には、建物の入り口の上のほうに、ありますね。

次は、アカデミア美術館に飾られていた絵。翼の生えた獅子ですが、翼がイタリアの国旗のように三色になっています。

それと、かつて使われていただろう、まさに、ベネチア共和国の旗(多分)。これは、コーナー博物館にて展示されています。

もちろん、お土産ものとしてもうっています。右側の赤っぽいのが、旗です。これは、アカデミア地区にあるお土産店より。

ちなみに、イタリアの国旗は三色国旗ですが、海で使われているものは少し違います。それは、三色旗の真ん中にさらに4つのかつての共和国の旗がかざられています。うち、一つにベネチア共和国の翼と獅子の国旗。残り3つが、ジェノバ、ピサ、アマルフィという3つの共和国(かつての)の旗となります。これは、船とか海洋施設でよく使われているようです。例えば、ヴァポレットの船尾には写真のように、こっちの旗が飾られているようです。

このように、ベネチアの街はいまでも、いたるところにこの翼の生えた獅子がいます。少しずつ装いも異なりますので、ベネチアの街に行きましたら注意してみてください。

 

 

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