相続を受けるにあたって気を付けておきたいこと

職業柄、相続ということに関わることが多くなってきています。相続により移転する財産をどう分割するといいのか、というのは、結構悩むところではあります。少なくとも、3つくらい検討するポイントがあるかと思います。それについて、議論を進めていきたいと思います。

まずは、関係者一同で円満に相続手続が行われるようにすることでしょう。相続の場合、普段扱うより大きな財産が動くことになります。そのため、その分配にについても、もめごとが発生しがちです。特に、普段、親族間の仲がよくなかったり、思うところがあったりすると、この時にそれが火を噴くということもありうるところです。いったん、火を噴くとその後の関係の修復は非常に困難となります。なので、あらかじめ関係者のコンセンサスを得ておく、等、もめないようにすることがもっとも大切なのではと。

次は、納税資金。一定額以上の財産を相続すると相続税を納付する必要があります。相続税の納付は原則として金銭による一括納付がもとめられます。つまり、相続税を納めるために一定額以上の資金がいるわけです。相続財産に預金や上場株式のように流動性の高い資産が多い、とか、相続人がそれなりに資金がある、ような場合であれば問題にはなりにくいです。逆に、相続財産が土地や建物等の流動性が低い財産だと当座の資金に困る、ということもあります。ここで、相続税の分割納付(延納)、金銭以外の財産による納付(物納)という制度もあるのですが、手続が面倒だったり制限があったりもします。納税資金を準備しそれにより一括で納付したほうがいいのではと思うところです。

そして、最後に相続税の額。分割の方法を変えると若干その時の相続税の額が変わってきます。とはいえ、相続発生後は相続税対策は制限されてしまう(というのは、相続税の額は相続発生時点の現況に基づくため)ので、どちらかというと、生前、どう財産を処分していくか、というところに相続税対策の重きが置かれることになるかと思います。

困るのが時として、この3つは矛盾することがあります。例えば、不動産(特に土地)の購入による節税対策ということがあります。詳しくは省きますが、これは、実際の不動産の時価と相続税法にもとづく評価額に差があることに着目し、手持ちの財産を不動産に代えるという手法があります。ただ、財産に不動産が増えるとその分財産の分割が困難となり公正な遺産分割が阻害されたり、流動性が減ることにより納税が資金が足りなくなる、ということも起こりえます。

ということで、大切なことは上記の3つがそれぞれに気を配ることが大切です。このほかにも、細かい論点や注意事項は多々あるのですが、大きな考え方としては、この3つでしょうか。これは、あくまでも個人的な考えなのですが、上記で最も大切なことは、円満な相続を実施することではないか、ということです。やっぱり、本来は一番というほど仲の良くあるべき親族間が、相続がもとで関係が悪化した、というのは、それは、亡くなられた方にとっても、当事者にとっても不本意なことだと思いますので。

 

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