中小企業でも知っておきたい内部統制(管理)の知識(9) ~統制活動、職務分掌、職務権限

中小企業でも知っておきたい内部統制(管理)の知識、今回から統制活動の具体的な内容を検討していくことにします。まずは、職務分掌、職務権限、これは会社内の役割分担の仕組みです。

職務分掌と職務権限

職務分掌は、誰がなにをやるか、という役割分担をさします。例えば、Aさんは営業で、Bさんは経理と財務、Cさんは人事にかかる業務を遂行する、というった感じです。または、お客さんの担当わけも職務分掌に入るでしょう。

他方、職務権限は、誰がどのような業務までできるか、という業務に対する制限をさします。例えば、受注する際に、100万以下なら課長決裁、1000万以下なら部長決裁、それを超えると取締役決裁、というように取引の規模/重要性によって決裁者が異なってくるようなことです。

つまり、職務分掌は横の役割分担、職務権限は縦の役割分担といえるでしょう。

役割分担の明確化の必要性

役割分担が明確であると業務遂行がスムーズになります。もし、職務分掌が全くない、ということになると、その都度その都度、職務分掌を決めていかないといけません。それよりはあらかじめ決めておいたほうが楽、ですよね。また、職務権限も決まっていないと、都度都度、経営者に確認していくことになります。それよりは、あらかじめ一定範囲権限を渡して、その範囲であれば、各階層の決断で進めるようにしておくと、スムーズに進みます。

つまり、ひとたび職務分掌、職務権限を設定することにより、経営者が都度都度承認を与える必要がなく、部下も権限の範囲内、自分の役割の範囲内であれば、自分の判断で進めることができるため、業務はスムーズとなります。

お互いに牽制しあう

職務分掌をすると組織内に牽制機能を作ることができます。ある一人の人が単独の業務をするとそこに誤りや不正の余地が生じます。例えば、在庫を管理していて、帳簿記録と実物のカウントを一人でしているとします。そうすると、その担当者は不正にその在庫を持ち出し、かつ、帳簿を適当な名目でつけてしまい、在庫の流用がなされてしまうこともありえます。これを防ぐためには、帳簿記録を付ける人と、実物のカウントをする人を分けると防げます。そうはいっても、共謀されるとアウト、ではありますが。

まとめ

職務分掌、職務権限、それぞれ縦と横の役割分担です。これにより、スムーズに業務を行うことができるとともに、お互いに牽制することもできます。中小企業の場合は、従業員が少ないこともあり、職務分掌、職務権限は曖昧でも何とかなってしまうことも多いです。ただ、できる限り明確にした方が、業務は進めやすいので最低限の分掌/権限は設定したいものです。

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