国際税務についてまとめてみました(6)~ 源泉税

これで、6回目となる国際税務についてまとめてみました、シリーズ。今回は源泉税についてどのように課税されるか考えてみました。

源泉税とは

源泉税というのは、本来、課税所得等を獲得した人が払うべき税金を、支払うほうがその分を天引きして納付する方法です。源泉税は国内取引でもかかりますが、ここでは国家間の源泉税について検討していきましょう。特に国際税務においては、課税当局と納税義務者が別の国家に属していることが多いため、源泉税は外資企業の多い国家にとって大切な税金の徴収手段となっております。

源泉税の対象となる税目

源泉税の対象となる税目は、所得税及びその他の税目(付加価値税、営業税等)となります。そのうち、所得に関するものは租税条約の適用を受けるため課税関係が若干複雑になります(これは後述します)。他方、その他の税目については、通常、租税条約の適用対象外となるため取引が行われた国の国内法に基づき課税関係が決まります。

なお、租税条約においては、配当、利息、使用料の源泉税について対象とされることが多いようです。配当は他の2つとは内容が異なるので、これについては項を改めて検討します。

恒久的施設がない場合

通常、利息及び使用料に対する源泉税に対する税率については国内法、及び、租税条約でそれぞれ定められております。また、検討の前提はA国企業はB国にて利息もしくは使用料を獲得し、かつA国企業はB国に恒久的施設を持たないとなります。

例えば、B国による国内法による源泉税が15%、A国とB国による租税条約による源泉税が10%としましょう。ここで、租税条約による源泉税が10%と書いておりますが、意味するところは10%を「超えない」ということになります。この場合、条約が優先するため、A国の企業がB国にて納めるべき源泉税の税率は10%となります。ここでは、租税条約がすでにある課税関係を修正していることに留意してください。

他方、A国の国内法による源泉税が5%だったとしましょう。その場合も、租税条約がまず適用されます。ただし、条約上は10%を「超えない」、となっているのでA国の国内法が定める5%は条約の定めとは抵触しません。そのため、B国の課税事業者がA国に対して納めるべき税金は5%となります。ここでは、租税条約によって新しく税金を納めることにならない(新しい課税関係を作らない)ことに留意してください。

実務的には、源泉税については、国内法と租税条約を比べてどちらか低い方の税率が適用される、と運用されます。その理論的背景が上述したものとなります。

恒久的施設がある場合

A国企業がB国に恒久的施設を有する場合は、事業利益のケースと同様に、恒久的施設を通じて獲得された場合には、B国にて課税されます。やっぱり、ここでも恒久的施設が大暴れなのですね。

事業利益、利息、使用料の関係に関する考察~まとめに変えて

前述したとおり、事業利益については非課税とされることが多いです。となると、海外の企業が国内の企業にお金を貸し利息を受け取る場合やライセンスを付与して使用料を取る場合には、これを事業利益としてしまうと支払う側の国家は当該所得に課税することができなくなってしまいます。これを回避するために利息/使用料については、別途、条項を定め、支払う側の国家でも税金を徴収することができるようにしたのでは、と考察します。

 

 

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