会計学とその近接領域(10) ~続:財務諸表監査

会計学とその近接領域、ついに10回目の連載となりました!今回も引き続き財務諸表監査のお話をば。今回は、財務諸表における主要概念を説明いたします。

リスクアプローチ

財務諸表監査における諸概念の中心的なものとして、リスクアプローチというものがあります。これは、多額の誤りが生じやすいところを中心に検証していく、という考え方です。つまり、財務諸表監査では完全なる正確性を目指しているわけではなく、また全てを網羅的に検証するのは実務上不可能です。そのため、誤りが起こらなさそうなところ、起こっても少額なところはさらりとみて、金額的重要性が高い、誤りが起こりやすい、と箇所に対して重点的に検証をします。

会計上の見積もり

上記でいうところの、「誤りが起こりやすいところ」の一つに会計上の見積もりがあります。会計上の見積もりとは、将来おこるであろう事象を予測し、それについて会計処理を行うことです。例えば、訴訟を起こされて敗訴しそうだ、というときに弁済額を見込んで計上するようなことがあります。このような場合、将来の事象であるため、金額がそもそも確定していない。そうなると、見積額と実績額が異なる可能性も結構高かったりします。見積額の妥当性を検証するのはかなり難しく関連する資料の閲覧、社長や事業責任者へのインタビュー、弁護士等専門家からの意見の徴収等重点的に手続を積み重ねる必要があります。

内部統制

内部統制は会社におけるチェック/管理の仕組みです。例えば、経理課員が伝票を作成して経理部長がチェックする、ということが挙げられます。このようなチェック体制がある場合だと、会計上の誤りが起こる可能性は低くなります。そのため、財務諸表監査を行うに当たっては、内部統制の状況を確認し、しっかりしているようだったら、監査人による財務諸表項目の検証は簡略化されます。逆に内部統制の状況がいまいちな場合は、重点的に財務諸表項目の検証が行われます。内部統制は全社的な観点のものと各プロセスのものがあり、プロセスに問題がある場合にはそのプロセスに関する財務諸表項目が重点的に検証されます。

まとめ

財務諸表監査のあり方を考えるにあたって、このような考え方があります。このような概念をおさえておくと各論に入ったときにすんなり入れると思います。

 

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