会計学とその近接領域 (19) ~ 会社法:株式会社

会計学とその近接領域、ということで、20回目となる今回は、会社法のうち株式会社の基礎をとりあげます。株式会社は合名会社の欠点である、事業規模が限定されることを克服すべく考えられた制度です。一般に株式会社の社員のことを株主といいますが、以下では社員という言葉にします。ここでは、社員は一般に使われている従業員ではなくて、オーナーを意味することにご注意ください。

株式と有限責任

株式会社の特徴は、「株式」と「有限責任」の2つです。株式は株式会社の社員権を分割して譲渡可能とする制度です。また、有限責任とは社員の責任が有限であること、つまり、会社が負った債務のうち、社員が負担すべき金額は出資額に限定される、ということです。

この2つの制度により、株式会社では多額の出資を集め事業規模を拡大することが可能となります。まず、株式制度により社員権が分割されていることにより多くの人から少額の投資を募ることができます。また、有限責任であるため社員が安心して出資することができます。つまり、10,000円出資すれば、会社としての事業が失敗しても、10,000円だけの損失ですみます。合名会社の場合は責任は無限だったのですが、株式会社は有限なので安心できますよね。

株式の譲渡容易性

上記の目的を満たすため、株式は合名会社の社員権を譲渡しやすくしております。まず、株式は原則として譲渡人と譲受人の同意があれば譲渡することができます。つまり、特段の定めを求めない限り、会社、取締役は株式の譲渡を制限することができません。また、証券取引所も整備されて、上場会社の株式については証券取引所で自由に売買できるようになっております。このように、社員権が自由に売買できることにより、社員は会社への投資、投資の回収をスムーズに行うことができるようになります。

所有と経営の分離

株式制度により多くの社員が存在しえます。そうなると彼らが集まって経営をする、ということは実質的に不可能となります。そのため、株式会社では社員とは別に会社の経営に専念する人を別途選定し、そういう人たちに会社の経営をまかせます。

具体的な制度としては、社員は株主総会というものを組成し、会社の全体的な意思決定を行うとともに、取締役を選任しその人たちに会社の経営を任せます。取締役の暴走を防ぐために、取締役の義務の設定、取締役会による監督、監査役等による監査という制度が用意されております。

債権者保護

株式会社の社員は有限責任であるため、会社の債権者の保護が重要となってきます。つまり、合名会社では会社の責任は社員が無限に責任を負うので、債権者は会社が借金を返せなくなっても、社員の個人財産から借金の返済を請求できます。株式会社の場合は有限責任制で出資額のみに限定されるため、会社の事業が失敗しても社員の個人財産からは請求できません。というわけで、債権者保護をするための制度がいくつか用意されております。

代表的な制度は資本制度となります。資本に相当する財産を会社に保有させることにより、返済の原資を会社に残すようにします。具体的には資本の額をもとに配当や払い戻しを制限することにより、一定の財産を会社に残すようにしているわけです。

まとめ

株式会社は株式と有限責任より特徴づけられます。これにより、多額の出資を集めやすくなります。他方で、株式と有限責任により、所有と経営の分離、債権者保護の必要性、株式の譲渡容易性、といった独特の制度が生まれます。

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