税金をめぐる正義を考える~多国籍間の税金軽減策をめぐり

多国籍企業だと、ロイヤリティーの取引をアイルランドやオランダを経由する、というスキームを利用して、税金を大幅に軽減するということをしています。例えば、グーグルでは、実効税率が2.4%という話をききます(http://www.assioma.jp/?p=4985)。ここでは、スキームの詳細ではなく、この取引にかかる各当事者の正義、を考えてみます。

企業にとっての正義

企業にとって、税金は費用という扱いになります。本来的に企業は利益を最大にして、それ株主に分配することを目的としています。そのために、企業にとっては、税金を減らして、その分利益を増やすべき、ということが課題となってきます。

ここで、グーグル等の多国籍企業が行っていることをみると、特に脱税等違法行為をして税金を減らしているわけではありません。法にのっとって税金という費用を削減している、となります。

つまりは、企業は彼らの正義として税金という費用を削減していることになります。

国家にとっての正義

国家は自国の公共的サービス(防衛、司法、警察、福祉、外交等等)の原資として税金を徴収しなくてはなりません。そのため、必要に応じて税金を法人、個人と様々なところから徴収する必要があります。

ここで、一つの考え方として、経済規模が大きく、その国で所得を稼いでいるほど、多くのサービスを国から受けているので、その分、税金を支払うべきという考え方があります。この考え方に基づき、法人税、所得税の税率が決められております。

この考え方に基づくと、グーグルのように本来アメリカに本社を置き、実質的にはアメリカでの活動により利益を獲得しているにもかかわらず、アメリカで税金を納めていないというのは、この原則にあてはまらない、と考えます。このように、国家(この場合アメリカ)から見ると、グーグルのような企業は、こういった節税策を使わず、アメリカにて相応の税金を納めるべき、ということになります。

国家間の立場、政策の違い

こういったことが起こる背景には国家間の立場、政策の違いがあります。アイルランドは多国籍企業にこういった優遇税制を適用することにより、海外の企業の参入をうながし、経済を発展させようとしています。租税法の制定は、本来、国家が有する権利となり、それを他国に干渉されるべきではない、という考え方があります。そうすると、国ごとに制度が違ってしまい、そこを利用した節税策がとられることが往々にしてあります。ただ、国家間で政策目的が違うことにより、調整は難しかったりします。

まとめ

多国間の税制の違いをめぐり、各当事者間の取るべき行動、その背景にある信念について考察しました。最近では、このような税制の違いにより、企業が大幅に節税することについて非難があつまっています。上記のスキームも利用できなくなる方向で税制改正が行われているようです。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM1402B_U4A011C1FF2000/

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