「燃えよ剣」から学ぶ組織論 (2) ~上に立つものは部下に不景気な顔は見せてはならない

さて、今回で2回目となる「燃えよ剣」から学ぶ組織論。今回も引き続き、上に立つもののふるまいについて考察します。今回は、上に立つものの気分が組織に及ぼす影響を。

燃えよ剣のあらすじ

「燃えよ剣」は幕末、新選組副長の土方歳三の半生を描いた小説です。剣術道場の日々、京都に行くまでのいきさつ、新選組結成、芹沢鴨暗殺、池田屋事件、大政奉還、江戸への引き上げ、蝦夷政府樹立、そして戦死までの状況が書いております。以下は大政奉還で隊内が沈んでいる様子から。

大政奉還の折に

土方歳三が江戸に隊士を募集しに行き、そこから京都に帰ってきた時の話。大政奉還(江戸幕府が政治の権限を朝廷に戻すこと)により、隊内が沈み込んでいる様子です。近藤勇も同様に沈み込んでおり、落ち込んでおり、それが言葉の端々に現れていました。その時、土方が近藤に向かって次のようなことを言います。

「新選組の大将はお前さんだ。お前さんが、源九郎義経みたいな白っ面で悩んでいることはないんだよ。大将というものは、悩まざるものだ。悩まざる姿を常に我々に幕下に見せ、幕下をして仰いで泰山のごとき思いをさせるのが、大将だ。お前さんが悩んでいるためにみろ、局中の空気は妙にうつろになっている。」

上に立つものの気分は部下に伝染する

これは、上に立つもの持っている気分や表情が部下に伝染し、最終的には組織全体に及ぼすことを意味しています。

ここでは、近藤が落ち込んだところを部下に見せたことにより、隊内の空気もどんよりしてしまうということを土方が諫めているわけです。

現代においても、上司が不安そうな顔をすれば部下も不安になるし、上司が不平不満を持てば部下を不平不満を持つようになります。そのため、上司は多少不安なこと、心配なこと、不愉快なこと、があってもそれを表には見せず、なんでもないような顔をしている必要があります。

ただ、上に立つものといっても人間であるためそういったネガティブな気分から常に離れられるわけではありません。そのため、ネガティブな気持ちを吐き出せる、処理できる、場所を部下以外のところで持つ必要もあるでしょう。

まとめ

「燃えよ剣」は色々なことが書かれており非常に面白い小説です。この連載では、組織論に関連するところだけとりあげていますが、他にも面白いことが色々とあるので、是非、手に取ってみてください。

 

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