火星人侵略引当金を計上できるか?~引当金の設定要件をめぐる諸考察

火星人侵略引当金を計上することができるか?ある意味ふざけたテーマですが、実は割と大真面目に議論したことがあります。会計に携わる人であれば、是非、読んでほしい投稿です。

引当金と設定要件

引当金、これは将来起こりうる費用/損失を当期の費用/損失とするために計上される項目です。例えば、将来の売掛債権が回収できないことに備えて設定する貸倒引当金、将来の賞与に対する賞与引当金等があります。

引当金は将来の費用/損失であればいつでも設定できるわけではありません。企業会計原則注解18(①~④は筆者による)によると、

①将来の特定の費用又は損失であって、②その発生が当期以前の事象に起因し、③発生の可能性が高く、かつ、④その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。

とあります。つまり、上記①~④を満たしたときのみ引当金を計上する、となります。逆に、どれかを満たさないと、引当金を計上することはできません。

火星人侵略引当金の分析

いよいよ本題。火星人侵略引当金を計上できるか、ということです。話の前提として、とある企業が今期の決算を迎えるにあたって、どうも今期の業績はいいが来期の業績がいまいちそうだ、、、という予想を立てていて、利益を平準化したいと思っている状況です。そのとき、その企業が、火星人が侵略してきて被害を受ける可能性があるので、その被害に備えるために火星人侵略引当金を設定する、ということです。

ここで、火星人侵略引当金の計上要件を検討してみましょう。①これは将来の特定の費用又は損失である、ということを満たせそうです。②については、もし、当該企業が過去の事業において火星人が侵略してきそうなことをおこなっていたら満たすかもしれません。③発生の可能性が高いか、、ということについてですが、そもそも火星人については実在性が疑問視されていることと、過去において火星人が侵略してきた、、という事例はないことからこれは満たせないでしょう、④金額の合理性は火星人が侵略してきた、というだけではどのくらい損失が出るかわかりません。本社ビルから工場、店舗、倉庫まで徹底的に攻撃されたら、大規模な損失となるでしょう。また、別の国に行ってしまう、ということがあれば、この企業の損失はゼロですよね。やっぱり、金額を合理的に見積もることは非常に厳しいといえます。

結論としては、引当金の4要件に照らすと、火星人侵略引当金の計上は会計上認められない、となります。

考察

このことからなにがいえるでしょう。引当金は将来の事象であるため、どうしても見積もりに頼ることになります。そこで、企業としては、利益を調整するための手段として引当金の計上を考えることがあります。それを防ぐために、会計基準では、引当金の4要件を設定し、利益操作の余地を減らしています。ここでは、火星人侵略引当金という意味不明な引当金を計上されることを防いでいるわけです。

なお、ここでの議論は10年以上前のものなので、今、通用するかはわかりません。また、IFRSはUSGAAPは将来の不確実性の開示は厳密に求められているので、もしからしたら、違う結論があるかもしれません。火星人侵略引当金、開示実務例をご覧になった方がいらっしゃいましたら、教えていただけると幸いです。

ちなみにこのポストはオーソンウェルズの火星人襲来事件のエピソードをもとにしています。これも、なかなかシュールな話で、妙に印象に残っております。

http://palladion.fantasia.to/005-Pal/004Radio01.html

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