国際税務についてまとめてみました(11)~移転価格税制の考え方

国際税務についてまとめてみました、シリーズ。今回も国際的租税回避の阻止、ということで移転価格税制を。

関係会社間の取引価格の調整

先に、税率の安い国に子会社を設立してそこに課税所得を計上する、ということについてはタックスヘイブン税制の規制を受ける、ということは前回紹介しました。

次に考えられる手としては、親子会社の取引で取引価格を調整して税率が安い国で課税所得をあがるようにする、ということが考えられます。

例えば、A国の税率が40%、B国の税率が10%、A国に親会社がありB国にある子会社に物品の販売。通常、A国の親会社は50でものを仕入れ他の取引先には80で売却するとします。また、B国の子会社は100で取引先に販売します。ここで、ケースとして(a) B国にある子会社に対しても同様に80で売却する場合、(b) B国にある子会社には60で売る場合の二つを考えてみましょう。

(a) における支払税額はA国親会社で12((80-50)*40%) 、B国子会社で2 ((100-80)*10%)となり、企業集団全体の支払税額は14となります。他方、(b)の場合は A国親会社で4((60-50)*40%) , B国子会社で4 ((100-60)*10%)となり、企業集団全体の支払額は8となります。この場合、(b)のケースのほうが税額が安くなっていますよね。このように異なる国に所在する関係会社間の取引価格を調整することにより、企業集団全体の支払税額を低く抑えることができます。

移転価格税制による調整

ただし、このような取引が行われてしまうと、A国での税収が減ってしまい、A国の税務当局は面白くありません。そのため、課税当局は異なる国に所在する関係会社間の取引については「独立企業間価格」を適用したものとして課税することができる、という規制を設けてこのような税金の軽減を防いでいます。

上述の例でいえば、(b)のケースであっても、A国の税務当局はA国の親会社に対して12課税することができる、ということになります。これは、あくまでもA国内の議論であるため、B国での課税関係には影響を与えずB国子会社の支払税額は4となります。

租税条約による調整

移転価格税制を採用している国は非常に多いのですが、移転価格税制について直接規定している租税条約はの条項はあまり見受けられません(「相互協議」が利用されることはあるのですが)。そのため、通常、移転価格税制については、その当事者国の税制に基づき適用されることとなっております。

まとめ

国をまたがる関係会社間における取引価格の調整による節税については移転価格による規制がかかります。原理はシンプルですが、実務上の運用には色々と困難があるようです。それについては、また、項をあらためて。

 

 

会計/税務/監査